当麻の場合
買って来たばかりのシャツを箱から取り出して、着てみる。店員から言われたように、一番上のボタンは一つはずして。
寝室の大きな鏡の前で伸は満足げに笑みを浮かべた。
これでもう、妙な誤解をされることもないだろう。
と、そこへ、当麻が入って来た。
「おかえり。」
「ああ、ただいま。……って何やってんだ、伸?」
「うん、シャツをね、買って来たんだ。」
ぱっと当麻の方を振り向いて、これでもか、という風に見せつける。
一秒、二秒、奇妙な沈黙があって。
「何、当麻。似合ってないのかい?」
わずかに刺を含んだ伸の口調に当麻は苦笑いをしてから、ちょいちょいと指だけで招き寄せた。
促されるまま、伸はそちらへ向かう。
とその瞬間、当麻の指が、伸の開いた襟にひっかけられた。
「ちょっと、何するんだよ、当麻!」
意地の悪い笑みを浮かべた当麻はにやにやしながら、その襟元を覗き込んでいた。
「微妙にサイズも大きいし、こんなとこ開けてたら中が見えるだろ? それとも見せてんの?」
「なっ……!」
ばんと両手で当麻を突き放した伸は、頬を真っ赤に上気させて声を張り上げた。
「変態!!」
言ってから、左手で胸元に手を当てて、襟元を隠す。右手を枕に伸ばし、投げつけたがそれは上手くかわされて、床に沈んだ。
軽く息を弾ませる伸に、さらに当麻が言い募る。
「今度、その格好で起こしてよ。俺、きっと目覚めすっきりなんだと思うけどなぁ。」
「なんだよそれっ!!」
「いわゆる『萌え』というやつだ。」
腕を組み大真面目に答える当麻を目の前でぽかん、と数秒。
伸はその台詞を理解してから、がっくりと頭を落とす。
結局、何を着ても僕は大変な目にあうんだ、と久しぶりに深い憂鬱に囚われるのだった。
久しぶりの「憂鬱」でした〜。Mさん、これでよかったですか?(笑)

