おひさまとあいいろねこ

 おひさまとあいいろねこ 本文




ヨルの国のくろいねこのおかあさんが、5ひきのこねこを生みました。
4匹のこねこはまっくろで、深い深いすみれ色の瞳でしたが、のこりの1ひきは、あいいろのからだに、銀色の瞳でした。



「くろくないなんて、ヨルの国のねこじゃないのさ」
あいいろねこは、ヨルの国のくろいねこたちの仲間にいれてもらえませんでした。

ひとりぼっちでした。

「ぼくは、ヨルの国のねこじゃないのかな」



ヨルの国は、おつきさまの唄で守られています。
あいいろねこは、
やさしく、やわらかいおつきさまの唄が大好きでした。

おつきさまの唄をきいていると
ひとりぼっちでもさみしくありませんでした。

あるとき、あいいろねこは
おつきさまにいいいました。

「あなたは、世界でいちばんきれいで
 唄がうまいのですね」

おつきさまはこたえました。

「いえいえ。ヒルの国のおひさまがいなくては
 わたくしは輝くこともできないし 
 唄うこともできません」



あいいろねこは、おひさまの唄をきいてみたいと思い、
ヒルの国へいってみました。
ところが、おひさまの唄はとてもまぶしくて
あいいろねこは、あわててヨルの国へかえりました。



「おつきさま。
 おひさまの唄はまぶしすぎて
 ぼくはきいていられないな」

「それは、おひさまのほんとうの唄を
 きいていないからですよ」

ほんとうの唄って、なんだろう。

あいいろねこは、おひさまのほんとうの唄がききたくて
ヒルの国にかよいました。



おひさまの唄を1000回きいたとき、
あいいろねこは、おひさまにいいました。

「おひさまの、ほんとうの唄をきかせてください」

しかし、おひさまはこたえません。
ただ ただ、唄っているだけです。
あいいろねこは、かなしくなりました。



「おつきさま。
 おひさまは、ぼくの声をきいてくれません。
 きっと、ぼくがあいいろだからにちがいありません」

「いえいえ。
 おひさまは力強く唄うものですから
 あなたの声が、届かないのです」



あいいろねこは、それでも
おひさまのほんとうのうたをききたいと思い
ヒルの国にかよいました。

何度、おひさまの唄をきいたのかもわからなくなったころ、
あいいろねこは気付きました。

おひさまの唄にあわせて、
草や木はぐんぐん成長してゆきます。
花々はあざやかな色で咲き誇ります。
鳥や虫や多くの生きものが生きています。

あいいろねこは思いました。

ああ、なんてきれいな唄なんだろう。
ヒルの国で、
ずっとこの唄をきいていたいな。



それから ゆっくりと
あいいろねこの色はうすくなり
ヒルの国の空とおなじ
そらいろになりました。
銀色の瞳は、おひさまとおなじ金色になりました。
金色の瞳は、見えなくなってしまったので
もう、おひさまの唄はまぶしくありません。
こうして、あいいろねこは、
ヒルの国のただいっぴきのねこになりました。

10

「やあ、おひさま。
 もう、あなたを見ることはできなくなったけれど
 このヒルの国で、ずっと唄をきいていられるよ」

おひさまはこたえません。
ただ ただ、唄っているだけです。
それでも、あいろねこはしあわせでした。
きらきらとかがやくおひさまの唄を聞きながら
すやすやと眠りにつきました。