おひさまとあいいろねこ 本文
1
ヨルの国のくろいねこのおかあさんが、5ひきのこねこを生みました。
4匹のこねこはまっくろで、深い深いすみれ色の瞳でしたが、のこりの1ひきは、あいいろのからだに、銀色の瞳でした。
2
「くろくないなんて、ヨルの国のねこじゃないのさ」
あいいろねこは、ヨルの国のくろいねこたちの仲間にいれてもらえませんでした。
ひとりぼっちでした。
「ぼくは、ヨルの国のねこじゃないのかな」
3
ヨルの国は、おつきさまの唄で守られています。
あいいろねこは、
やさしく、やわらかいおつきさまの唄が大好きでした。
おつきさまの唄をきいていると
ひとりぼっちでもさみしくありませんでした。
あるとき、あいいろねこは
おつきさまにいいいました。
「あなたは、世界でいちばんきれいで
唄がうまいのですね」
おつきさまはこたえました。
「いえいえ。ヒルの国のおひさまがいなくては
わたくしは輝くこともできないし
唄うこともできません」
4
あいいろねこは、おひさまの唄をきいてみたいと思い、
ヒルの国へいってみました。
ところが、おひさまの唄はとてもまぶしくて
あいいろねこは、あわててヨルの国へかえりました。
5
「おつきさま。
おひさまの唄はまぶしすぎて
ぼくはきいていられないな」
「それは、おひさまのほんとうの唄を
きいていないからですよ」
ほんとうの唄って、なんだろう。
あいいろねこは、おひさまのほんとうの唄がききたくて
ヒルの国にかよいました。
6
おひさまの唄を1000回きいたとき、
あいいろねこは、おひさまにいいました。
「おひさまの、ほんとうの唄をきかせてください」
しかし、おひさまはこたえません。
ただ ただ、唄っているだけです。
あいいろねこは、かなしくなりました。
7
「おつきさま。
おひさまは、ぼくの声をきいてくれません。
きっと、ぼくがあいいろだからにちがいありません」
「いえいえ。
おひさまは力強く唄うものですから
あなたの声が、届かないのです」
8
あいいろねこは、それでも
おひさまのほんとうのうたをききたいと思い
ヒルの国にかよいました。
何度、おひさまの唄をきいたのかもわからなくなったころ、
あいいろねこは気付きました。
おひさまの唄にあわせて、
草や木はぐんぐん成長してゆきます。
花々はあざやかな色で咲き誇ります。
鳥や虫や多くの生きものが生きています。
あいいろねこは思いました。
ああ、なんてきれいな唄なんだろう。
ヒルの国で、
ずっとこの唄をきいていたいな。
9
それから ゆっくりと
あいいろねこの色はうすくなり
ヒルの国の空とおなじ
そらいろになりました。
銀色の瞳は、おひさまとおなじ金色になりました。
金色の瞳は、見えなくなってしまったので
もう、おひさまの唄はまぶしくありません。
こうして、あいいろねこは、
ヒルの国のただいっぴきのねこになりました。
10
「やあ、おひさま。
もう、あなたを見ることはできなくなったけれど
このヒルの国で、ずっと唄をきいていられるよ」
おひさまはこたえません。
ただ ただ、唄っているだけです。
それでも、あいろねこはしあわせでした。
きらきらとかがやくおひさまの唄を聞きながら
すやすやと眠りにつきました。